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   家庭教師のジャンプ東京支部 » 辞書を眺めよう

辞書を眺めよう

2010年07月28日

辞書は「調べ物のためにある」と思う方も多くいらっしゃると考えますが。
何気なしにパラパラとめくって眺め読みをすると面白いですよ、お薦めします。
特に「この一冊には編纂者がいる」事を想像をすると、ひとつの作品を鑑賞しているかのような感覚に陥ります。


それぞれ辞書によって志向は変わりますが、親切過ぎる程にわかりやすく、実感をさせてくれる辞書も中にはあります。
今回はその中でも秀逸を何点か挙げたいと思います。


●ひとり【一人】
用例:「四十年前のことを思い出して、私は――心の中で赤面しました」

 四十年前に何かが起きましたね、もしくは何かを起こしましたね。そしてそれを隠す「私」という人物。
四十年という時を経てもなお赤面してしまう出来事とは、果たして幾ばくなるものなのでしょうか。最新版を出版する際に、是非その正体を明かして欲しいものです。


●かねがね 機会有るごとに、特定の言動に出たり出会ったりしていた事を表す。
用例:「お前さんとこは旨い物を食わせると――聞いていたが、こいつは凄い刺身だねえ」

 今度はお前さんです。突然出てくる「こいつは凄い刺身」に、「だねえ」の語尾。一種の合わせ技ですね。しかしいつの時代なのかが不可思議ではあります。


●すなわち【即ち】
用例:「玄関わきで草をむしっていたのが――西郷隆盛であった」

 とうとう個人名が出てしまいました。しかも有名人です、びっくりします。
堂々たる玄関前ならぬ「玄関わき」で、そして草をむしっているその雄姿にはさらなる愛情を感じてしまうものですね、是非この目で確かめたいものです。しかし、無理に西郷隆盛が「すなわち」の後に続いてしまっても。


●つぎに【次に】 時間的に、または物事の順位の上で、前のものに続いて問題とする・(なる)事を表す。
用例:「東京で驚いたものはたくさんある。第一電車のちんちん鳴るのに驚いた。それからそのちんちん鳴るあいだに、非常に多くの人間が乗ったり降りたりするので驚いた。――丸の内で驚いた」

 どんどん驚くその姿。可愛らしいですね。丸の内で驚いたものだけがアバウトな事も気になります。
そしてもしも東京で成功するための上京途中だとしたら、涙を誘う田舎暮らしの家族とのやり取りもあったかもしれません。


●やにわに 何かをした途端、ふと思いがけない行動に出ることを表す。
用例:「隅田は鼻声で、同じ言葉をくり返しながら、帽子もかぶらず、――、外へ出て行ってしまった」

 この用例に感性の鋭さを感じるのは私だけでしょうか、やにわに隅田です。同じ言葉とはどんな言葉だったのか、永遠の謎ですね、そしてそれを「鼻声で」。
とにもかくにも素晴らしい文章です。


●みずむし【水虫】 手足の指の間などに出来る皮膚病。小さい水ぶくれが出来たり、表皮が剥けたりする。治りにくい。

 「治りにくい」という付け足し、優しい想いに溢れていますね。死に直面する訳でもなく同情されにくい、むしろ伝染する可能性が高いため厄介者にされやすいこの病気に向けてのこういった思いやり。水虫感染者の心を温かく、前向きにさせてくれるに違いありません。
ちなみに肝硬変にも「治りにくい」と書かれてありました。こちらにはドキリとさせられてしまいますね。


●ごきぶり 台所を初め、住宅のあらゆる場所に住む、油色の平たい害虫。さわると臭い。

 触りました、そしてその指の臭いをかぎました、辞書編纂者も大変です。ですが体を張るその心構えに感動すら覚えてしまいます。
ちなみにカメムシにも「さわると臭い」と書かれてあります。


●そうぞう【想像】
用例:「想像をたくましゅうする」

 「たくましゅう」と出てきてしまいました。ここはどこでしょう。


●これ
用例:「――はつまり、なんですな」

 いくら想像をたくましゅうしても、なんの事やらさっぱりわかりません。


●ねえ
用例:「すし食いねえ」

 ベタですね、ベタです。しかし作者に「気持ち、わかるよ、」と、そっと伝えたくなる感情を起こすのは私だけでしょうか。
まさに辞書との会話、冥利に尽きます。


●すとっぷ【ストップ】 止まれのしるし。
用例:「ストップ!」

 「!」マークひとつだけの変化、簡単かつ単純に済ませてしまったのでしょうか。しかし「!」を加えるだけで随分とニュアンスは変わってきますね、これこそプロの編纂者のなせる妙技と言えるでしょう。


ふと思えば、だんだんと会話を楽しんでいるような感覚になってきていますね。まさに先述の通り、辞書冥利に尽きるというものです。


また、辞書との会話続編、書かせていただきます。
そして皆さん一人一人が辞書の眺めに目を凝らすことを、切に願います。


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